「え? あ、愛子さん……」
だからふたり分……。最初から仕組まれていたって言うことね。
愛子さんの服をつまみ、彼女の耳に顔を寄せる。
「ふたりの仲を深めるって、どういうこと?」
ヒソヒソと窺えば、愛子さんは楽しげに笑ってみせた。
「素敵な人じゃない、断るなんてもったいないわよ。絶対に彼を物にしなくちゃ」
「物にするって……そんなぁ」
勝手なこと言わないで欲しい。こっちにだってこっちの、事情ってものがあると言うのに。
人の気も知らないで……。
部屋から出ていくふたりの背中を見送り、大きなため息をつく。
「なんだ。俺とふたりっきりは嫌なのか?」
ふたりが部屋からいなくなると、途端にいつもの社長が現れる。ぶっきらぼうな話し方が、癇に障る。
「逢坂社長。これは一体、どういうことですか?」
「どういうことと言うのは?」
ゆっくり頬杖をつき、漆黒の瞳が私を捉える。この瞳に私は弱い、でもここで目線をそらしたら負けだ。


