どうしてか座卓の上には、ふたり分の料理しか用意されていない。ここは四人分用意されているのが普通ではなかろうか。
逢坂社長に話しかけたくても愛子さんたちがいる手前、ボロが出てしまいそうで怖い。社長と知り合いだとバレたら、後々厄介なことになるのが目に見えている。
料理に手を出したくても出せない、まるで飼い犬が餌を前にしてお預けをくらっている状態に小さく息を漏らす。すると、そんな私を見ていた逢坂社長が、ククッと笑いを堪えているから見て目が点になってしまった。
逢坂社長が笑ってる──。
まさか今日この日に、社長の笑うところが見えるなんて。それだけでも、今日ここに来た甲斐があったというものだ。
ちょっと得した気分でいると、愛子さんに肩を叩かれた。
「ここだとふたりでゆっくりお庭を散歩ってわけにもいかないわね。私達は席を外すから、ゆっくり食事しながらふたりの仲を深めてね」


