今日のお見合いは、市内のホテルの中にある料亭で執り行われる。料理に関わる仕事をしている身としては、一度行ってみたいと思っていた店。こんなことでもなければ足を踏み入れられない高級料亭だけに、お見合いとは違う意味で緊張してしまう。

「こちらのお部屋でございます」

 接客係の女性に案内されたのは、店の奥にある個室。廊下のガラス張りの大きな窓から見える、美しい庭園に目を奪われる。

「素敵……」

 さすがは高級料亭だけあって、楽しませてくれるのは料理だけではない。所々に飾ってある調度品も、目を引くものばかりだ。

 うちの店ももう少し、高級感的な感じを出してみるのもいいかもしれないなぁ……。

 自分がここに何をしに来たのかも忘れてじっと見入っていると、愛子さんに肩を叩かれた。