夕飯を終えると風呂に入って髪を乾かし、早々に自分の部屋へと戻る。ベッドに寝転び目をつぶると、大きく息を吐いた。

「やっぱりお見合いの話、もっと真剣に考えようかなぁ」

 お風呂に入って疲れが取れ頭の中が少しほぐれたからか、そんな弱気な言葉が口から漏れる。

 結婚をしたいからじゃない。今は仕事が一番、その気持ちは嘘じゃない、本当のこと。

 でも今朝、胸の奥に隠していた逢坂社長への気持ちを、久しぶりに思い出してしまった。手の届かない立場の違いすぎる人を好きになって報われない恋をするよりも、社長への仄かな恋心は早く断ち切るほうがいい。

 とはいえ、お見合い相手も新進気鋭の社長さん。どんな会社の社長か知らないから、うまくいくかどうかわからないけれど。