偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~


 最終決定権は逢坂社長がもっている。あの人の舌を唸らせて、採用の一言をもらいたい。

 今回のとり天は自信作だ。相良部長と市ノ瀬くんも太鼓判を押してくれている。何の心配もない──とまでは言わないけれど、それなりの確信もある。

 なのに、いまいち気分が上がってこないのは……。

 とり天が盛られた皿を、目線まで持ち上げる。見た目だけでもサクッと揚がっているのがわかるそれを見て、ため息を漏らした。

「高坂さん? 何か失敗でも?」

 そんな私を見て、市ノ瀬くんが心配そうな顔を見せる。

「あ、いや、ごめん。とり天はうまく出来てるよ。ただ……」

「ただ、なんですか?」

 今朝の社長とのことを思い出して……とは言えない。社長をキッチンから追い出してしまった。しかも思いっきり背中を押して──とは、口が裂けても言えるわけがない。

 ドアの向こうで顔は見てないけれど、あれは相当怒っていた。私情を仕事の場に持ち込むような人ではないと思うけれど……。