「店長。今日は本当にすみませんでした」

「高坂さん。入力ミスをしたのは君じゃないんだし、もう謝らなくてもいいよ。それより。クールで有名な逢坂社長があんな熱い人だったなんて、始めて知ったよ」

「そうですね。本当に素敵な人だと思います」

 素直な気持ちが、口から溢れる。

「……素敵?」

 店長がキョトンとした顔で首を傾げた。

 ヤ、ヤバい。私ったら、何言ってんのよ!

 慌てて店長に向かって、手を横に振った。

「ち、ち、違います違います! かかか、勘違いしないでくださいよ。素敵って言ったのは、会社のトップとしてって意味で……」

 しどろもどろになってしまって、説得力がまったくない。アハハとぎこちなく笑っていると、店長が意地悪な笑みを浮かべた。

「なになに、高坂さんって逢坂社長のこと好きなの? 男の俺から見てもカッコいい人だし、惚れちゃうよねぇ。ライバル多そうだけど、まあ頑張って」

 肩をポンポンと叩かれて、「は、はあ……」と恥ずかしさを隠すように横を向いた。

「と、ところで逢坂社長はどこに?」

「もう帰ったよ」

 そうなんだ。ちゃんとお礼、言いたかったのに……。

 今回のミスは、私に集中力が欠けていたから。仕事に没頭していたつもりっだったけれど、時々思い出す真史さんの“結婚”のことに気を取られてしまっていた。