ここでひとり考えていても埒が明かない。まずは店長にミスを報告し、今日の模擬営業をどうするのか話し合わなくては。
事務スペースから飛び出すと、今日から応援に来ている市ノ瀬くんとぶつかる。
「おっと! 高坂さん大丈夫で……。て、どうしたんですか? そんな血相変えて」
「ああ、市ノ瀬くん。ちょっとマズイことになって」
事情を説明すると、嘆声をもらして項垂れた。
「それはかなりマズいですね。伊勢どりはスーパーで売ってないし、すぐに調達するのは難しいですよ」
難しいどころか、不可能に近い。伊勢どりを使ったメニューは今回の目玉で、今日だけ他の鶏で代用と言うわけにもいかない。近隣店舗から分けてもらうにしても、今からでは間に合うかどうか……。
私ひとりの判断ではどうすることもできなくて、フロアに居る店長のところへと向かう。キッチンとフロアを仕切る暖簾をくぐると、そこにいるはずのない人がいて。驚きから大きな声を上げそうになるのを、寸前のところで抑えた。
「しゃ、社長……。おはようございます。どうして、ここへ?」
「なんだ、俺が来ては迷惑とでも言いたいのか?」
「そんな、滅相もありません」
力なく答えると、真史さんから目線を外し俯く。
どうして、このタイミングで現れるのよ──。


