「正確に言うと、もう彼女じゃない。以前付き合っていたことは紛れもない事実だ。それを隠すつもりはない。でもちゃんと話し合って別れた……俺はそう思っていたが、あいつはそうじゃなかったみたいだな」
真史さんは私の両手をやんわり掴み、そっと下ろす。軽くため息をつき苦笑いしてみせると、私の頭の上に手を乗せた。
「嫌な思いをさせて悪かった。辛かっただろう?」
覗き込む顔と、頭を撫でる手が優しい。怒りはとうに収まり、涙腺が緩み始める。
辛かった。でも辛かったのは、三浦さんにキツく当たられたからじゃない。私が真史さんの本当の恋人で、今の彼女は私なんですと言えなかったことが辛くて悲しかった。
辛かっただろうの問になんと答えたらいいかわからなくて、首を横に振る。
「朱里、少しだけ時間をくれないか? 三浦ともう一度話し合って終わりにしてくる。もう二度と、お前に辛い思いはさせない」
真史さんは真剣にそう言ってくれるけれど、正直素直に喜べない。だって私は真史さんの、本当の彼女じゃないから……。
「べ、別に、無理しなくてもいいですからね。仲直りするなら、今がチャンスですよ」
無理に強がって、ヘヘッと作り笑いしてみせた。


