でもだからといって、偽装恋愛を続けようと思っているわけではない。今回のことは、欲張りすぎた私への神様からの罰──人を騙そうとするから、天罰が下ったんだ。
もうこれでおしまい。真史さんとは今までどおり社長と一従業員の関係に戻って、私は仕事に邁進する。それが一番いい。
深呼吸すると顔を上げる。最後が泣き顔じゃみっともないと、渾身の笑顔を見せた。まあきっと、上手く笑えてないだろうけれど。
「偽りの恋は今日で終わりにしましょう。短い間でしたけど、ドライブデート楽しかったです。素敵な思い出を、ありがとうございました」
朱里、よくできました──心の中で自分を褒める。これでいいんだと自分に言い聞かせると、会釈をして社長室から出ようと一歩足を踏み出した。と同時に、真史さんが大きく息を吐くのが聞こえた。
「ひとりで勝手に終わらすな」
真史さんの、至極機嫌の悪そうな声に足を止める。恐恐と振り向けば、伸びてきた手に腕を掴まれて引き寄せられた。咄嗟なことに力が入らず彼の胸に飛び込むと、そのまま強く抱かれてしまった。
「俺がいつ、彼女をやめていいと言った?」
「だから……。こういうことは困るって、さっき言いましたよね? それに私は、真史さんの彼女じゃない。そんなこと、はじめから分かってたことじゃないですか」


