顔は笑っているけれど、心の中は土砂降り大雨注意報。心にもないことを言うと、こんなにも胸が苦しくて痛くなるものなんだと、はじめての気持ちに自分でも困惑してしまう。
「あいつが、そんなことを言ったのか? なんで?」
「なんでって。真史さんと海へ行ったあの日、秘書課の方も同じところに行っていたそうで、手を繋いで歩いているところを見ちゃったそうです。それを知った三浦さんに呼び出されて……」
堪えきれず、またも涙が目に浮かぶ。
「真史さんには、今後一切近づくなって言われました」
「なんだよ、それ……」
真史さんは大きなため息をつき、髪をクシャッと搔き乱す。
私とドライブデートしたことが、三浦さんにバレていて動揺している──そんなところだろうか。困ったような顔を見せる真史さんを見て、悲しみは膨れ上がるばかりだ。
俯き、ひとり涙を堪える。
「なあ朱里。お前、あいつに近づくなって言われて、なんて答えた?」
「……何も答えずに、そのまま部屋を出ました」
それは私の、ほんの少しの抵抗。あそこで『はい』と言ってしまったら、私の真史さんに対する気持ちまで否定しているようで、それだけは絶対に言いたくなかった。


