研究棟から本社ビルへと渡りエレベーターに乗り込むと、真史さんは黙ったまま十二階のボタンを押した。私は行ったことがないが、十二階と言えば社長室他、重役たちの部屋があったはず。とすれば、三浦さんたちがいる秘書課もあるわけで。
どうか、彼女たちに会いませんように──。
その願いが通じたのか無事に社長室の到着し、ホッとしたのもつかの間。真史さんは社長室のドアを閉めると、ガチャッと鍵を掛けてしまった。
「しゃ、社長?」
なんで鍵?と振り返ろうとした瞬間、腕が背後から伸びてきて、気がついたときには抱きしめられていた。
「どうして、電話にもメールにも出ない?」
言葉と一緒に、熱い息が首筋にかかる。真史さんは顔を首元に埋めると、私のうなじに唇を這わせた。はじめての感覚に、体がゾクッと震える。
「真史さん、離して。会社でこんなこと……」
「質問に答えたら離してやる」
顔が見えないから怒っているのかそうじゃないのかわからないけれど、たぶん後者? いつもより声は幾分低い、でもそこから刺々しさは感じない。私を抱きしめている腕の強さからも、そこはかとなく優しさを感じる。


