「いらないとは言ってない。早くよこせ」
「よこせって……」
なんて言いぐさなのと文句を言いたいのに、掴まれたままの腕が気になって心がざわついたまま。
男の人に触れられるなんて父親以外、幼稚園の頃のお遊戯会以来じゃない? どんだけ男性に免疫がないのよ、私。
腕と顔が熱くて仕方ない。
「あ、あの。その手、離してもらわないと、クッキー渡せないんですけど……」
なんなの、この気持ち。
ひどく照れくさいし、鼓動が速くて胸が苦しい。
あぁ~困った。胸の奥の、そのまた奥の奥に押し込んだ、決して表に出してはいけない想いが、こんなときに顔を出しそうになるなんて。
なんで、今日なのよっ!!
思いっきり腕を振って、逢坂社長の手から自分の腕を離す。顔を見られないようにうつむきクッキーを両手で持つと、それをグイッと社長の胸に押し当てた。


