自分でも意味不明なことを言っているとは思うけれど、どうにも平常心を失っているようで、まともな考えが浮かばない。
その間にも真史さんは私との距離を縮めていて、あっと思う間もなく腕を掴まれた。
「何があった?」
怒っているのか、それとも心配しているのか。どっちとも取れない顔で、私のことを真っ直ぐ見つめる。そしてその声は、真剣そのものだ。
何があった──か。さすがは真史さんだ。
それはきっと、さっき私が目をそらしたのに気づいての言葉なんだろうけれど。そんなの、言えるわけがない。
思わず目をそらす。
「またか。もう一度聞く。何があった?」
二度も目をそらしたのが気に入らなかったのか、真史さんがチッと舌打ちする音が聞こえた。怒らせてしまったかな。さすがに何も言わないまま、この状況をやり過ごすのは難しそうだ。
「……別に何も」
小さなため息をついて、ぼそっと呟く。
「嘘をつくな。その顔は何もなかったって顔じゃない。いい加減、白状しろ」
「は、白状って……」
警察の事情聴取か。
そう心の中でツッコミを入れるも、いつもの調子が出ない。


