偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~


 そんな事を考えながら、花籠膳を食べる様子を窺う。顔の表情だけで判断するのはどうかと思うけれど、これはなかなかいいんじゃない? 真史さんの眉間にもシワが寄っていないし、他の人たちの表情も前回より良さげだ。

「高坂さん。花籠にして、正解だったみたいですね」

 私の耳元に顔を寄せた市ノ瀬くんが、上機嫌な声を出す。

 それでも緊張は隠せない。握り合わせている両手に、自然と力が入る。

 真史さんは何もかもをひとりで決めてしまうような、ワンマンな社長ではない。しっかりと他の人の意見も聞き入れ、それを熟考する。意見を交わし論議して、スタッフを信じ自分を信じて最終的な判断を下す。だから彼は、判断を間違えたことはない。

 裁判で判決を待っている気分──。

 どんな判断が下るのか。目線を下げ今か今かとその時を待っていると、真史さんが椅子から立ち上がる音がした。

「雨後春筍の次のフェアのメインはこれで行く。満場一致だ。高坂、市ノ瀬、よく頑張ったな」

 その声に顔を上げ前を向く。瞬間、真史さんの優しげな目と交わると、今の今まで忘れていた少し前の苦い出来事を思い出してしまう。気が動転した私は、慌てて視線を逃がした。