こんな時だからこそ集中して、仕事のことだけを考える。余計なことは考えない、頭の中から今あったことは全削除、何もなかったお見合い前の自分に戻るだけ。
すっくと立ち上がり、目に残っている涙を拭い取る。エレベーターが三階に到着すると、一目散に化粧室へと駆け込んだ。
美濃焼の和モダンな天ぷら皿を調理台に並べる。そこに天紙を敷いて、揚げたてのとり天とふのりの天ぷら、サツマイモとピーマンと蓮根の天ぷらを盛り付けると、茶碗蒸しに刺し身、小うどんやご飯、香の物とデザートが入った花籠の中に収めた。
「うん。これでよし」
満足できるものができて、うんと頷く。
前回の試食会では定食で出したとり天を、見た目も大切だと今回は花籠での提供に変えた。年齢層が高い『和処 雨後春筍』での新メニューだということで、ターゲットも四十代以上とし、“いろんなものを少しずつ食べていただく”を心がけた。
「すぐに運んで」
市ノ瀬くん他、数名のスタッフに声を掛けると、社長たちが待っているテーブルへと運ぶ。
「伊勢鶏とふのりの天ぷら彩り花籠膳でございます。どうぞ、ご試食ください」
まだネーミングは決まっていないが、今回はわかりやすくそう命名。まだ一考の余地がありそうだ。


