やっとの事でエレベーターが到着すると、逃げ込むようにエレベーターの中へと急いだ。
誰もいないエレベーターの中。緊張や不安、怒りや悲しみ、何もかもから解き放たれて、力なくその場にしゃがみ込む。泣きたくなんかないのに、目から勝手に涙が溢れ出た。
この涙は、彼女たちに難癖をつけられて辛かった涙じゃない。真史さんに今現在、彼女らしき存在がいたということへのショックの涙。
真史さんは私より六歳も年上で、今までいろんな女性と付き合ってきただろう。たくさんの恋愛をして、酸いも甘いも経験してきたに違いない。そんなこともちろんわかっていたけど、まさか目の前に彼と付き合っている彼女が現れるとは……。
今カノと偽りの彼女──。
そんなの、天秤にかけなくても答えはわかっている。
じゃあなんでお見合いしたのか、じゃあなんで偽装恋愛を言い出したのか。真史さんが何を考えているのか、彼の行動の何もかもがわからなくなって、頭の中は混乱しっぱなしだ。
「どうしたらいいのよ。もうすぐ大事な試食会があるっていうのに……」
左腕をゆっくり目の前まで動かし腕時計を見る。休憩時間はあと十五分。のんびりしている暇はない。今は誰にも会いたくないけれど、そんなことも言ってられない。


