どうせ今ここで何を言ったって、私が不利なことにかかわらない。こんなときは嘘も方便、相手を逆なでするようなことは言わないほうがいいだろうと冷静に判断。
深呼吸して一度気持ちをリセットすると、誰に目線を合わせるでもなく喋り始めた。
「逢坂社長は私の元上司で、新作メニューのことで悩んでたら、参考になるだろうって市場に連れて行ってくださいました。手を繋いだのはゴールデンウィーク中で人が多かったので、はぐれたらいけないだろうと社長がおっしゃってくれて、その言葉に甘えてしまいました。三浦さんという存在を知らなかったとは言え、軽率な行動をとってしまい本当にすみませんでした」
まくしたてるようにそう言い放つと、深々と頭を下げた。
これでいい。
どうせ先の長くない偽装恋愛。いずれ終わることがわかっている偽りの彼女で、こんな面倒事に巻き込まれるのはまっぴらごめん。
あぁ~スッキリした──なんて。
表向きにはそう思っているのに何故か心がシクシク痛むのは、彼女たちの前で堂々と『私は真史さんの彼女です』と言えなかったから。本当の恋人じゃない私には何も言う権利がないのが悲しくて辛かった。


