ここ社内ですよ? 誰かに見られたりでもしたら、どうするんですか!?

でもそう思っているのは、どうやら私だけみたいで。真史さんの顔は至って涼しげ、こんなことでも恋愛経験の差を感じて落ち込んでしまう。

「どうした、そんな顔をして」

グイッと顔を覗き込まれて、慌てて一歩下がる。

「な、なんでもありません。顔、急に近づけないでください」

心臓に悪いんですけど……。

頭の先からつま先までバッチリ決まっている、真史さんと私とでは月とスッポン。近づいた彼からは都会的なウッディ系の香りが漂い、それだけでもクラッとめまいがしそうなのに、朝からその爽やかな笑顔とか。

顔が勝手にニヤついて、ヤバいんですけど……。

会社では見慣れない真史さんの表情に、胸がキュンとしてしまう。さっきまでバクバク激しい音を立てていた心臓が、今度は小さく縮こまった。

ねえ私の心臓、朝っぱらからおかしな動きしてるけど大丈夫?

急に不安になって、ギュッと胸元を押さえ俯いた。

「何? まだ俺に慣れない?」

穏やかな声と再度頭に手を置かれた感覚に、ゆっくり首を振りながら顔を上げる。