「嬉しそうだな」

「え? そ、そうですか?」

「体が小刻みにリズムを刻んでいる」

 ふっと可笑しそうに笑う真史さんを見て、心の中のウキウキ感が自然に出てしまっていたことに気づく。どうも私は思っていることや考えていることが、顔や態度に出てしまうみたいだ。

「すみません。以後、気をつけます」

 恥ずかしさを隠すように俯き、頭を下げる。と、その頭の上に手が乗せられた。

「謝る必要も、気をつける必要もない。嬉しそうな朱里を見るのは、俺も嬉しいからな」

 ポンポンと頭を優しく撫でられて、体が痺れるような感覚に襲われる。途端に顔が火照り始めた。

 真史さんの言葉や仕草に驚いて顔を上げると、頭に乗っていた手がすべり私の頬に触れる。運転中だから私の方に顔を向けてないけれど、触れられているせいか見られているよりもドキドキする。鼓動が速くなって、心臓が痛い。

「なあ。もしかして、デートは初めてなのか?」

「え?」

 何をいまさら。

「初めてです。お恥ずかしい話ですけど、二十六年間、彼氏もいないです」

「マジか? じゃあ、俺が初めての彼氏?」

 そう聞かれて言葉に詰まる。