「伊織?伊織ってば!!」

「えっ、なに?由梨ちゃん。」

「なに?じゃないよ。どしたの?そんな怖い顔して…」

「ほんと?ごめん、なんでもないの。
ただ、天宮くんのこと考えると、どうもムカムカが収まらなくって。」

食堂でご飯を御一緒している目の前の友人、由梨ちゃん。
この学校に入学してから初めてできた友であり、自分で言うのもなんだが、かなり仲はいいと思う。

そんな彼女に眉を下げられ心配されたものだから本音をぶちまけると、苦笑された。


「天宮くんかっこいいのに、そんなこと言うの伊織くらいじゃない?」

「ううん、きっと私と同じ思いを持つ人が地球上のどこかにはいるはずなの。」

「規模がデカすぎでしょ…
でもなんでそこまで毛嫌いするかな。」

なんて言いながら白飯を口に入れてゆく由梨ちゃんを尻目に、私は女どもに囲まれる天宮を見据えた。

ニコリとした笑みを崩さぬ目に弧を描いた口。
あんなのどう見てもただの作り笑顔なのに…
どうして騙されるのやら。

遠くから見ただけでもわかる作られた人柄、人格といっても変わりないだろう。

どうしてあんなやつが人気者なのか、訳が分からない。

というか、いけ好かないんだ。




それに……

と、私は天宮の隣で笑みひとつ浮かべることなく、さも周りにいる女子達がいないかの如く黙々と食事を口にしている彼を見て、長く重苦しいため息をついた。


「ねえ、湊くん。今度一緒に遊ばない?」

「あ、ちょっとずるいっ!私も私も!」

「馬鹿ね、アンタなんかと湊くんがデートしてくれるわけないじゃない。」

「なによっ!自分だって湊くんとデートしたことない癖に!」



「……ねぇ、うるさいんだけど。どっかいってくれない?」





天宮 海莉、隣に居座る彼の親友ともいえる程に常に一緒にいる彼の名は南野 湊。

天宮に匹敵するほどのイケメンで、モテモテ…ならしい。

何を隠そう彼は私の幼馴染で、かれこれこの世に誕生した瞬間から一緒という、誕生日まで同じの偶然。

そんな湊は中学時代からカッコイイだなんだとモテ始めたのだが、長年一緒にいると彼の魅力も私の目には何がいいのやら…と言った状況。

常に無表情でクールな幼馴染と、私の天敵、天宮 海莉が親友だなんて、どんな悪夢だよ。

まあとにかく、その私の幼馴染までも誑かした罪、いつか償ってもらわなければ困るのだ。





「また湊くん見てるの?
いいよね。爽やか王子とクールプリンス。類は友を呼ぶっていういい例だわ。」

「ははっ、爽やかでもクールでもないっての。猫かぶり王子共めが。」

「なんか行った?伊織。」

「ううん、何も。」