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夜十時を過ぎていた。結局飲み会はキャンセルし、私は仕事後適当なカフェで時間を潰してアパートへ帰ってきた。
「ただいま」
しんと静まる部屋。由梨はすでに寝室で寝ているんだろう。丁寧にドアを閉めると、私はリビングの明かりをつけた。
テーブルの上には白いマグカップが置いてあった。由梨がつくったコーヒーだ。
私はバッグを椅子におき、そっとカップの取手に手をつけた。
はじめの違和感は一瞬だった。
カップの硬い感触と混同して、私はすこし首をひねった。
黒い液体に移る自分の顔を見つめながら、ゆっくりとカップを傾けて口をつける。
甘い。濃い。
そして、彼女のコーヒーは冷めていた。

