聖の声が少し低くなったのがわかる。


「なんか、急に海崎の連絡先教えてほしいって言われてさ。教えたんだよ」


高井が話し続けるけど、聖が問いかけたのは、たぶん私だ。


きっかけはおかしかったけれど、私たちは今付き合っているわけで。
いくら利用していいって言っても、こっそり連絡を取り合ってるとなると、いい気はしないと思う。


「ふーん……」


聖の相槌の声は恐ろしく冷たかった。


「ひなた、天形はなんて?」


私のほうを見た聖の目は、笑っていなかった。


「……元気?って……」
「それだけ?」


頷くと、いつもの聖の笑顔に戻った。


「そっか」


元に戻った聖に、胸をなでおろした。


「えーっと……ごめんな、矢野。彼女がほかの男と連絡取り合うとか、普通に嫌だよな」


私たちのやり取りを見て、高井が恐る恐る謝った。


聖が怒ったというか、不機嫌になったのは、そういう理由じゃないと思う。
天形が相手というところがよくなかった。


「いや、いいよ。でも、もうやらないでくれよ?」
「おう。友達だからって勝手に教えることはしない。ちゃんと確認はしないとだな」


聖が厳しく言わなかったのをいいことに、高井は笑顔で言った。


「……確認せずに個人情報を教えるのは普通にしちゃいけないんだよ」
「……だよな。海崎も、ごめん」