沙奈ちゃんが言う作り笑いが信じられなくて、廊下を歩く近江君を見ていたら、沙奈ちゃんがからかうように言ってきた。


「そ、そんなことないもん」


……多分。


「聖ー」


すると、ドア付近から生徒会長が聖を呼んだ。
聖は体育祭実行委員だから、呼ばれたんだと思う。


まだ一年なのに、相変わらずすごいな、聖は。


「ちょっと行ってくる」
「行ってらっしゃい。頑張ってね」
「頑張るようなことはねえよ」


聖は流れるように私の頭に手を置いて、髪をぐしゃぐしゃにして会長のところに行った。


「もう、聖のバカ。今日は寝ぐせなくてきれいだったのにー」


私は手櫛で髪を整える。


「だから今日は下ろしてたんだ?超暑いのに」
「え、もしかして変だった?」
「ううん、可愛いよ」


沙奈ちゃんの言葉に一安心すると、始業を知らせるチャイムが鳴り、先生が教室に入って来た。


「じゃあ、またあとでね」


そう言って沙奈ちゃんは自分の席に戻った。
生徒会長の用事はすぐに終わったみたいで、もう席に着いていた。





始業式が終わると、今日からさっそく体育祭の練習をするから、体操着に着替える。


「体育祭なんて滅びればいい……」


グラウンドに移動しているとき、沙奈ちゃんがそうこぼした。
運動が苦手なのか暑いのが苦手なのか。


私はどっちでもないけど……