それもそうだ。
人の印象はほとんどが見た目で決まるし。


「かもな。でも、たったそれだけで俺は天形のことを知った気できた。近江のことだって、優しいだけの奴だと思ってたしな」


でも、近江と関わるようになって、天形と話して、少しずつ印象が変わってきた。


当たり前のことかもしれないけど、何も知らないで相手を決めつけることほど、怖いことはない。
それなのに、俺は知らないうちに相手のことを決めつけていたんだ。


「……でも……だからって、ひなたちゃんを譲る必要はないと思う」


近江の言いたいことはわかる。
これは、俺自身の問題だ。


「天形はただひたすらにひなたの幸せを願ってるんだ。自分の気持ちを押し殺してまで。でも、俺は……俺は、自分の幸せを求めた。ひなたに気持ちを押し付けた。完全に俺の負けだよ」


自分の負けを認めると、なんだか気持ちが楽になった。


でも、近江は納得していないようで、ふてくされている。


「……かっこ悪い」


近江は、文句を言うわけでも反論するわけでもなく、俺の悪口を呟いた。
それがなんだかおかしくて、笑みがこぼれる。


俺は子供みたいに頬を膨らませる近江の頭に手を置く。


「うん、知ってる」


そして俺は機嫌が直っていない近江を置いて、教室に入った。