たとえ、届かなくても

どこに着くんだろうと、興味津々の眼差しをした私は、悟くんを見失わないように駆け足でついて行った。

しばらくして到着した場所で目にした光景に、思わず目を輝かせた。

「きれい」

見下ろせば、この街が広がっている。
見上げれば、夜空の星達に囲まれる。

「だろ」

「見慣れた街も、違う場所から見ると全然違うね。別世界みたい」

「そうだな。別世界だな。俺、飲み物買ってくるから待ってて」

「わかった。ありがとう」

しばらくして戻ってきて、手渡されたのはカフェオレだった。私の好きなやつ。

隣で、悟くんは相変わらずコーヒーを飲んでいた。

「やっぱりコーヒーなんだ」

「当たり前。コーヒー好きだから」

ちゃんと自分の好き嫌いを口に出せる人っていいなって思う。

コーヒーの香りに包まれて、ふと瞳を閉じたその瞬間、脳裏にかすかな記憶が蘇ってきた。

「もしかして、この場所って…初めて会った所?」

「思い出したのか?」

「うん。少しだけ…。悟くんは、私と過ごした時間どうだった?」

「楽しかったよ。でも、正直、俺のこと好きじゃないかと思ったこともあるけど」

「そんなことないよ。なんで?」

「何考えてるかわからなって思ったり」

「何度も言われたことある。私、自分の気持ち伝えるの得意じゃないんだ。だから、よく誤解される。でも、頑張って言えるようになろうとしてたんだけど、変われなかった。言葉が喉につっかえて…」

「無理に変わろうとする必要ないんじゃないか?少しずつ自分のペースでゆっくりと変わっていけばいい。急いでもいいことなんてないし。追い込まれるだけだよ」

「私、焦りすぎてたんだね」

「そうだな」

相変わらず、優しい。それに、ちゃんと自分の気持ちを言ってくれるところ…変わってない。

好き…

生きてる時にそう伝えていたら、変われたのかな。

でも、もう会えなくなるかもしれないのに、好きだなんて言えなかった…

私は弱さを克服できなかった。

ごめんね…

弱くてごめん…

私、悟くんが思ってるような人じゃない。最低なんだよ。

それでも一緒に過ごしてくれたことが嬉しくて…嬉しくて…

徐々にぼやけていく視界。

そういうことか。

蘇ってくる今までの記憶…。

悟くんとちゃんと話すためにこの世界に戻るチャンスをもらえたのかな。