小学校では男女の壁がなく、いじめも悪口さえ無い。そんな環境で過ごした祐衣は今年から中学生になった。
「祐衣ちゃーん!仮入部行こ〜」
祐衣は慌てて頷いた。
祐衣はバドミントン部に入部した。

「ねぇ、奈乃佳ちゃんって子可愛くなくない?笑」
「確かに笑上手くもないよね」
ひそひそと聞こえる悪口に祐衣は疑問を抱いた 〝なんでそんなこと言うのだろう〟と。
「ね、祐衣もそう思うよね!」
祐衣は作ったことの無いような笑顔をつくりながらその場を去った。
「今日奇数?私、余ったんだけど」
今日は偶数のはずだった。1人俯いて姿を消そうとする奈乃佳。誰も聞こえないような小さな声で何か伝えようとしている。祐衣はそんな奈乃佳を見て自分が傷つけられているかのような感覚に陥った。
「先輩、今日は偶数です。奈乃佳ちゃんトイレ行ってたみたいです」
気づいたら口にしていた。怖い面持ちをした同級生を見ると微かに手が震えていた。
「ごめん、みなみ。私奈乃佳ちゃんとやる」
みなみなら分かってくれると信じて 祐衣は言った。みなみは少し寂しそうに笑って頷いた



部活が終わったあと、トイレに向かった祐衣はトイレの前で立ち尽くした。祐衣の悪口。
動けなかった。トイレから出てきた同級生たちは気まずそうに俯いて通り過ぎようとした。祐衣はそれが悲しかった。溢れ出る涙を堪えて言った
「なんで」
それ以上言葉に出来なかった。鋭い目付きで祐衣を見つめて
「なんで仲良くするの?」
心に突き刺さった。何も答えずにトイレの個室に駆け込んだ。