偽のモテ期にご注意を


「ちょっと、草尾くん、ココの数字違ってるわよ」
「え?あ、ホントだ。すみません」

後輩の草尾は体育会系のがっしりとした体に、わんこのような性格の爽やかなイケメンだ。

入社して4年、かなり重要な仕事を任せれるようになってきたが、たまに簡単なミスが出る。

『小さなミスが無くなると良いんだけど』

席に戻りパソコンと睨めっこしている草尾をチラリと見ながらそんな事を思った。

入社当初から商品企画部に配属になり、一度も移動した事は無いが、忙しくもやり甲斐のある部署だ。

自分の先輩に当たる内海は、今でこそ部長だが、当時はリーダーで辣腕を振るっていた。

厳しい人だったが、何かあったら直ぐに矢面に立ってくれる頼もしい存在だった。

自分も彼のようになりたいと、今まで頑張ってきた。

朝一のメール確認と、提出書類の確認が終わり、一息つく為に席を立つ。

自販機コーナーで缶コーヒーを買って、長いすに腰かける。

『置鮎さん大丈夫だったかしら』

改めて昨日事を思い出した。

風邪だとは思うが、熱が高かったので病院に行った方がいいと言ったのだが、頑なに病院を嫌がっていた。

『まぁ彼女いそうだし、私が心配することじゃないか』

自嘲気味に笑ってから、すくっと立ち上がり、飲みかけのコーヒーを持って自席に戻る。