「もう、からかわないでよ。」
涙目になりながら軽く三石を睨むと、悪びれもせず笑っている。
「からかってませんよ。何か最近楽しそうだなと思ってねぇ」
「楽しそう?」
「えぇ、仕事が終わりに近づくとソワソワしてるし、スマホ気にしてるし」
「そ、そんな事してた?!」
指摘されるまで全く気付いていなかった事に慌てる。
「してましたよぉ。それで、どうなんです?」
「どうって・・何が?」
「惚(とぼ)けちゃって、付き合ってるんですか?」
「!?そんな人居ないわよ。三石の勘違い」
「えぇ、じゃぁなんでソワソワしてたんですか?」
「それは、行きつけのお店に行きたかったからよ」
一瞬置鮎の事を思い出したが、彼は三石でいう所の「観賞用」だ。
『だいたい、あんなハイスペックな男が私なんかと恋愛するなんて、考えるだけで馬鹿馬鹿しい』
半分ほど残っていたグラスの中のビールを一気に飲み干し時計を見ると21時になろうとしていた。
「そろそろ私、帰るわね」
何か言いたそうな三石を無視して立ち上がる。

