「キスをされるかと?」
悪戯っぽく笑いかけてくる。
「や、それは思ってませんが」
キッパリと言い切る沢城に一瞬動きを止めた置鮎だが、次の瞬間声を上げて笑い出した。
「面白い人だ」
『やっぱりワザとか』
慌てて、自分でシートベルトを締めると、クスクス笑っていた置鮎もシートベルトを締め出した。
「何が食べたいですか?」
「そう・・ですね。お任せします。あ、でも堅苦しくないところをお願いします」
「了解しました」
慣れた手つきでシフトレバーを操作し、流れるように発進した車は、車の流れに乗って、軽快に走る。
「車・・の運転好きなんですね」
窓の外を見ていた沢城が、不意にそう聞いてきた。

