「ご飯出来たわよ」
置鮎に気付き笑顔で迎えてくれる。
それだけで心が温かくなる。
『これが、幸せというものなのだろうか』
食事は生きる為に必要な栄養補給位にしか思って居なかったので、腹が膨れればそれで良かった。
味はするが、それが美味いとか不味いと感じた事も無かった。
それが、今は出汁の匂いを美味しそうと感じる。
「郁哉?」
入り口で立ち尽くしたままの置鮎に、小首を傾げながら問いかける沢城に、物思いに耽っていた事に気付いた。
「美味しそうな匂いですね」
席についてふと考える。
『仕事が終わってから来たのだろうか?いや、仕事が終わってからなら、もっと遅くなっている筈。
なら、早退した?』
嬉しい反面、それが気になって、素直に嬉しい顔が出来ない。

