「今、コーヒーと軽食を頼んだので、食べ終わってからの説明でも構いませんか?」
躊躇いがちに言葉を紡いでいるのは、説明を先延ばしにしていると思われていないか不安なのだろう。
「えぇ、急がなくても構わないわ」
本当は聞いてスッキリしたい気持ちもあったが、ふと視線を置鮎の手元に移した時、手が白くなる程握り締めている姿を見て、思いとどまった。
『私は置鮎さんの何を見ていたんだろう。ううん。何も見ていなかったんだわ』
握り締めている手に、自分の手を重ねると、ハッとしたようにこちらを見る。
「ごめんなさい。」
「え」
「私、貴方の事何も見ていなかったのね。
貴方も苦しんでたんでしょ」
「俺は!・・俺は自業自得ですから」
フルフルと力なく頭を振る置鮎を見て、咄嗟に体が動き胸に抱き寄せた。
「!」
驚きに体が強張るその背中を、小さな子をあやす様にトントンとすると、徐々に体から力が抜けていく。
そのまま、お互い言葉を交わす事無く、ルームサービスが来るまで抱きしめ合った。

