「終わったから返すわ」 受話器を堀江に渡し、エレベーターの方を見る。 暫くすると、エレベーターのドアが開き、30代の背の高い男性が降りて来た。 「お待たせしてすみません。先ほど電話で話しました。社長秘書の前野です」 「沢城恵です」 「どうぞこちらへ」 そう言って、元来た方向へ恵と連れ立って戻っていく。 「前野さんのあんな慌てた顔、始めてみた」 堀江がその後姿に向って小さく呟いた。