見慣れたその人は何時も通り、仕立ての良いスーツに身を包み、隙の無い動きで歩いている。 だが、その横には、綺麗な女性が腕を組んで嬉しそうに何かを話している姿があった。 -婚約者位いるでしょ- あの日、会場で聞いた言葉が頭に響く。 ドクン。 血の気が引いていく。 置鮎は沢城に気付く事無く車に乗り込み、車は前方に向って走り去って行く。 車が見えなくなるまで動く事が出来なかった。