電車のシートに座ると、綾はショルダーバッグから大学ノートを取り出した。



新しい小説のタイトルが決まった。



マジックで大きく


「綾の秘密の夏休み」


と書き込む。



その時綾はふと視線を感じたような気がした。



温かくて優しい、包み込むような。



綾の胸をキュッと締め付ける、懐かしい感覚。



風が通り抜けたような気がして、綾は自然に笑顔になっていた。


《fin》