「すっげー楽しかったよ」


リョウはいつものように、顔全体で笑った。


「行かないで…」


綾の二重のくっきりとした瞳から涙が溢れ出す。



「あーや」



リョウが優しく呼びかけた。



「…ありがとう」



綾がなんとか口にすると、リョウは満足そうに笑って「じゃあね」といった。



「お兄ちゃ…」



綾が言いかけた時にはリョウの姿は消えていた。