「練習?」


「うん。俺のことリョウって呼ぶ練習」


「あ…」


綾がリョウを見ると歯を見せて笑う。


「呼んでよ」


綾は胸に手を当てると大きく息を吸い込んで、吐き出した。


心臓がばくばくする。




「リョウ…」




震える声で口に出すと、間髪入れずリョウが「もう一回」と言った。


「…言ったじゃん」


「声が小さかった」


リョウが嬉しそうな笑顔で綾を見る。


「リョウ」


「声が小さいぞー」


リョウは立ち上がると、


「じゃあ俺が『あやー!』って呼ぶから、俺より大きな声で言いなよ」


そう言ってリョウは大きく息を吸い込んだ。