「フリーマーケット来なかったじゃん」


「ごめん。行きたかったんだけど」


「今日図書館て約束したじゃん」


「人が多くてさ」


「嘘つくなら約束しないで」



本当はこんなこと思ってないのに。
綾の口から勝手に言葉が出てしまう。



「今からなんかしようよ。俺なんでも付き合うよ」


リョウの声色は優しいまま変わらなかった。



「なんで」


まばたきと共に涙が地面に落ちる。


「なんで私に優しくするの?」


私なんていじめられっ子で根暗で良いところなんて一つもない。


からかうならやめて…


そう言おうとした綾を、リョウの言葉が遮った。




「大好きだからだよ」




二人の間にサーっと音を立てて風が流れていった。