「ごめん」


頭上から声がした。


綾は弾かれたように顔を上げる。


「遅くなっちゃった」


綾の視界には、いつもの白いTシャツとデニムのリョウがいる。


心配そうに綾を覗き込んでいた。


リョウはしゃがんで大学ノートを拾うと、土を払って綾に差し出した。


「大丈夫?」


綾は無言でリョウから大学ノートを受け取った。


リョウはネックレスのチェーンが切れた金色のうさぎも拾うと、綾に手渡す。


「綾はウサギが好きなの?」


リョウからうさぎのネックレスを受け取らずに、綾の口から言葉が漏れてきた。


「なんで」


綾が座る土に涙が落ちた。