なんだか自分が惨めに感じて、綾は首を振った。


涙が出そうになるのを唇を噛んでこらえる。


人前で涙を見せるなんて、絶対に嫌だ。


「綾、明日はなにする?」


リョウの声はいつもと変わらない。


「明日は…叔母さんと伯父さんとご飯行くみたい」


「明後日は?」


「フリーマーケット…」


日曜日は町役場の広場で開催されるフリーマーケットにいこうと、恵子と恒夫から誘われていた。


「あの…、来ないの?フリーマーケット」


リョウと呼ぼうとしたけどやっぱり呼べない。


「行きたいな。すっげー楽しそうじゃん」


綾の顔が明るくなる。


「楽しいって叔母さんも言ってた」


「綾は欲しいものある?」


綾はまた無言になる。


綾の欲しいものは母に否定されることが多いから。


「月曜日は同じ時間に図書館?」


変わらないリョウの声に、綾は無言で頷いた。