「綾から食べなよ」


神社の境内のベンチに座ると、リョウはカップラーメンを綾に渡して割り箸を割った。


「ありがとう…」


消えそうな小さな声でなんとか口にして、綾はカップラーメンと割り箸を手に取った。


掌から温かさが伝わってくる。


割り箸で麺をとってすする。


何年か前に、父にねだって母に内緒で食べた味がした。


「美味い?」


リョウがクリッとした目で綾を見た。


「美味しい」


真夏の神社で食べるカップラーメンは、本当に、すごく美味しかった。


「俺も」


リョウは待ちきれないように綾の手からカップラーメンと割り箸をとった。


綾が使った割り箸でカップから麺を取ると、音を立てて一気に啜る。


「うっめ!!!」


今日もリョウはシワひとつない真っ白な白いTシャツだった。


カップラーメンを一気に食べると、リョウはしまったという顔で綾を見た。


「あ、わりい…俺全部食べちゃった」