「ラーメンマニアの本」「全国ラーメン制覇百科」など、その日の自習室の長机にはラーメンの雑誌が山積みにされていた。


「リョウ……くん…は…
ラーメン好きなの?」



「リョウって呼んでよ」



綾にとっては男子を下の名前を呼ぶだけでもこそばゆいのに、リョウはあっさりとそう言う。


「練習しようか」


「へ?」


テーブルを向かい合って椅子に座った綾を、リョウはまっすぐ見つめた。


「言ってみて。リョウって」


「…」


恥ずかしくて綾は下を向くけど、リョウは容赦ない。



「簡単じゃん。リョウって言うだけだよ」


「り…」


一文字発しただけでも、綾の言葉は詰まってしまう。


正面に座ったリョウを見ると、テーブルについた肘で顎を支えて、笑顔でまっすぐ綾を見つめていた。