新幹線が駅のホームに着くと、そこからさらに在来線で30分。


到着した駅は山に囲まれていた。


改札を出る前から、白髪の混じった初老の女性の優しい笑顔が目に入る。


「綾ちゃん」


恵子おばさんは綾のスーツケースを手に持つと、クリーム色の軽自動車の後部座席に乗せた。


「綾ちゃんもどうぞ」


7月だけど世の中の学校はまだ休みじゃないから、綾は周囲の視線を避けるように急いで車に乗った。


その時、綾はあれっと思う。


恵子おばさんが車を発進させた時、改札の前に男の子が立っているのが綾の目に入った。