「くだらない恋愛小説なんて書いてないでもっと文学を読むか勉強をしなさい」


母に言われた言葉を思い出し、綾の胸を締め付ける。


「なんで勝手に読んだの?勝手に人の部屋に入らないでよ」


綾が涙目で反論した。


「私は綾の親でしょう。親が娘のことを知るのは当たり前のことです」




手のひらにペットボトルが戻されて、綾は我に返った。


「あーや」


リョウが真っ直ぐな目で綾を覗き込んだ。


嫌なことを思い出した。


夢なんて…


「俺の夢聞く?」


石から立ち上がったリョウを綾が見上げる。


シワのない真っ白なTシャツの背中の向こうに夏の青空が広がっている。