「あ、綾見て!」


リョウが階段の上から綾を振り返った。


綾が階段を上ってリョウの方に行こうとすると、リョウが綾に手を差し出す。


戸惑った綾が恐る恐る右手を出すと、リョウは躊躇なく綾の手を掴んで自分の方に引き上げた。


木々がひらけたそこには、石で出来た小さな祠があった。


眼下には山に囲まれた田舎の小さな町が広がっている。


「わぁ」


綾は思わず声を出した。



絵の具でベタ塗りしたみたいな真夏の真っ青な空に、白くてずっしりとした入道雲が浮かぶ。


心地よい風が綾の汗を乾かしていく。



「座ろ」


リョウが手前の平たい石に腰掛けたので、綾もその隣の表面が平たくなった石に座った。