「田舎だからね、行くとこはないけどご飯は美味い」


叔父の恒夫に連れられ、綾は地元のスーパーに入った。


ちょうど夕飯前の時間帯で、スーパーは混雑していた。


人に見られたくない綾は早くスーパーを出たかったが、恒夫おじさんはスーパーに併設されているパン屋に入る。


町役場で働く恒夫は顔が知れているようで、パン屋さんのレジの女性にも気さくに声をかけていた。


「菊川さん、珍しい子連れてるのね」


レジの女性がすかさず綾に目をつける。


「姪だよ。孫に見えるだろうけどね」


そういって恒夫は綾に「好きなパンを買いなさい」と言った。


綾がチーズのパンを一つトレーに乗せると、「遠慮はいらないよ」と、恒夫は苺のデニッシュやソーセージパンやカスタードクリームパンを次々とトレーに乗せる。


こんなに食べきれないなあと綾が思っていた時、外に視線を感じた。


顔を上げると、パン屋の外に短い髪をワックスでセットした男子と目が合う。


慌てて綾は視線を逸らした。