真っ白な歯を見せて少年が笑う。


「綾の本も見せてよ」


急に名前を呼ばれて綾の心臓は飛び出るほど波打った。


どうして私の名前…といいかけて、テーブルに置いた大学ノートに「知花綾」と名前が書いてあることに気がつく。


初対面で呼び捨てだなんて、随分馴れ馴れしい。


でも同じ中学生くらいの子に下の名前で呼ばれるなんて、なんだかとても久しぶりで綾はくすぐったかった。


「俺、リョウ」


聞いてないのにリョウは勝手に名乗った。


私もなにか喋らなきゃ、と、綾は必死に話題を探す。


「あの…学校は…」


口にしてから綾は激しく後悔した。


綾が今一番言われたくない言葉を、なぜリョウに聞いたんだろう。


自分のこういうところが綾は大っ嫌いだ。