「見せて」


少年は気にする様子もなく、大きな瞳でじっと綾を見た。


綾が何も言わないので、少年はなおも喋る。


「下に本いっぱいあるよ。俺が借りてきてあげようか?」


綾は黙って首を振った。
緊張で肩に力が入って身体がこわばる。


「俺、喉乾いちゃった」


そう言って少年はガラス張りの扉を開けて部屋を出て行った。


一人になると綾は胸に手を当てて呼吸を整えた。


学校に行かなくなってから3ヶ月。久しぶりに同じ歳くらいの、しかも男子に話しかけられて、綾の心臓は緊張でバクバクした。


読んでる本や両親のことや、私のことを知ったらきっとあの子も私をバカにする。


部屋を変えようと思ったけど、さっきはどこの部屋も大人がいた。


おじさんが仕事を終えて迎えにくるまでにはまだまだ時間がある。


どうしよう。


綾は一人泣きそうになった。