私たちがそのまま保健室に駆け込むと、中に先生はいなかった。もしかしたら、会議に行ってるのかもしれない。

「ねぇ、宙斗くん、だいじょ……え?」

 うしろを振り返れば、宙斗くんはダラダラと汗をかいている。

 あれ、今って真夏でしたっけ?

 そんなボケをかましたくなるほど、滝のような汗をかいてる。

「えっ、ちょっと本当にだいじょ……」

「もう無理だ、死ぬ」

 限界だとばかりにリボンから手を放して、ズササーッと壁際まで離れていく宙斗くん。

私の手からは、ダラリと力なくリボンが垂れている。

「えー……それはないよ、宙斗くん……」

 なにも、そんなに逃げなくても。

 ショックを受けながら、私は壁にぴったりと張り付く残念王子を唖然と見つめる。

「無理言うな。体が拒否してんだよ、仕方ないだろ」

「宙斗くって、今までよく学校で生活できてたね」

 あ、そっか。女子はみんな、じゃがいもだと思ってるんだっけ。

「これがあと二年も続くと思うと……死にたくなる」

「早まらないで!」

 あまりにも思いつめた顔をするので、思わず引き止めるように叫んでしまった。ここまでくると、女嫌いというより恐怖症だ。

「この世界からあらゆる女子が消滅すればいいのに」

「ちょっと! 今、全国の女子を敵に回したからね!」