冷ややかで諦めたような空虚な瞳。優しい眼差しを向けてくれた彼は、もういない。私がきみから奪ってしまったものの大きさに気づいて、眼球の奥底から涙が突き上げてくる。

「ごめんね、本当にごめんね……」

 頬にいくつも伝う雫に、宙斗くんが目を見開くのに気づいた。

 やだ、また宙斗くんに迷惑がられちゃう。でも止め方がわからない、私……どんなに嫌われたって、きみのことが好きだから。

「そばにいられなくても、私はきみの味方だよ」

 私が、明日きみの汚名を返上する。宙斗くんがクラスのみんなに誤解されたままなのは、悔しいから。

「なに……言って……」

 かすかに震える宙斗くんを見て、決意する。宙斗くんは女の子みんなが簡単に裏切る、自分のことしか考えていないみたいな言い方をするけれど、そんなことはない。少なくとも私は誰がなんと言おうと、世界中の人間が敵になってもきみの味方だ。心からきみを想ってる人もいるんだってこと、教えてあげなくちゃ。でなきゃ、きみはずっとひとりだ。そんなのぜったいダメだだから、人を信じられないきみに、私ができることをしよう。

「宙斗くん、偽装カップルは解消しよう」

 辛いけど、寂しいけど、偽装でも付き合えるって下心から一緒にいたんじゃないんだってことを知ってほしい。これ以上、誰かを嫌いになってほしくないから。

「は? 解消するって……」