優しく美代の頭に手を乗せる東堂先生。その瞬間、いつも余裕の表情を崩さない美代の頬が赤くなった気がした。

 美代、まさか本当に先生のこと……? でも、楓も宙斗くんも気づいていないみたいだし、考えすぎかな。

「行こう、美代」

「え、えぇ……」

 クリスさんに手を引かれて、どんどん進んで行ってしまう美代。その背中を、私は楓と宙斗くんに挟まれながら見送る。

「うわぁー、今のたらしっっぽいよな、宙斗」

「あぁ、計算してないところが天然記念物って感じだな」

 楓と宙斗くんの言葉に、私は「確かに」と返した。

 そんなこんなで私たちは色々あったけれど、ビーチにビニールシートとパラソルを設置して、個々に遊ぶことになった。美代はクリスさんと一緒に海の中に入ってしまい、楓は飲み物を買いに行ってくると言ったっきり帰ってこない。たぶん、女の子たちに捕まってるんだろう。チャラいけど、楓はイケメンの部類に入るから。

 もちろん、本人もやぶさかではないと思うので、ほっておくけれど。

「ねぇ、宙斗くんは海に入らないの?」

 パラソルの下で、私は隣に座っている宙斗くんに声をかける。彼は無言でスケッチブックを取り出して、鉛筆を握った。

 あ、もしかしてここでデッサンするのかな。